福一の初期対応

昨晩深夜、NHKが福一の事故初期についてドラマ形式で放送した。①1号機の非常用冷却機と②3号機の消防車による送水についてスポットをあてた。
①1号機のアイソレーションコンデンサー(IC)は非常用の冷却機であるがバルブが閉になっていたようだ。にも係らず現地の指揮を取る免震重要棟では1.コントロール室から停止の明確な報告が上がってこない、2.排気口(ブタの鼻)からモヤモヤとした煙が出ていた、これでアイソレーションコンデンサーは動いていると勘違いしていた。動作確認は建設以来やっておらず誰も作動時の排気を見たことがなかったという。NHKスリーマイル島原発取材でアイソレーションコンデンサー作動時は大量の煙が出ることがわかった。これを福一の誰かが知っていれば誤認はなかったのだろう。

②3号機は非常用バッテリーで冷却していたがバッテリーが無くなるのは時間の問題だった。そこで消防車による送水にきりかえたが結果として送水した水の半分以上は別経路に行ってしまい炉心を充分冷却できず大爆発をおこした。消防車送水は訓練した事はなくぶっつけ本番であった。あとでわかったのは送水経路の支線にポンプがあり動いていればポンプ側には流れないが停止しているとポンプを通って別経路に流出する。別経路は1気圧なので3.5気圧の炉心より流出しやすい。


システム的に何重にも安全だと言われ続けてきた原発であるし、そうであって欲しかったが現実は安全ではなかった。何故だろう、何がたりなかったのだろうか?本来、非常時に働くべく設置されていた非常用冷却機が肝心の非常時に動いていないのに動いていると誤認され、ぶっつけ本番の消防車送水は送水経路に見落としがあった。しかし現地からみれば「たくさん対応していた。そこだけをとりあげるのはどうなのか」という声が出そうだ。

かつて中岡哲郎氏が著書『コンビナートの労働と社会』で巨大コンビナートの矛盾を指摘していた。コンビナート運転員は普段メーターをチェックし運転確認する。運転員の能力は小さな事故があって対処すれば磨かれるが小さな事故はあまり起きない。しかしひとたび事故が起きれば巨大事故であり運転員は対処不能、この不安をかかえて日々労働しているという。原発も同じではないだろうか。